Case.1『父のマンション』
プライバシーを守るため、実際の相談内容を改変して掲載しております(写真は実際のケースとは関係ありません)
- 信託財産/金融資産と自宅マンション
- 委託者・受益者/父(89歳)
- 第二受益者/母(83歳)
- 受託者/長女(58歳)
- 残余財産帰属権利者/長女(58歳)
- 信託監督人/当プラザ税理士
- 信託スキーム構築・諸手続担当/当プラザ司法書士
相談内容
本件は、当初、長女からの相談でした。
父は藤沢市内にマンション・金融資産を所有しています。
父は、身体的な理由から、住み慣れたマンションを退去し、有料老人ホームに入居を考えています。
年齢的なこともあり、今後父は認知症などで判断能力が無くなってしまうことが考えられます。
もし、父がこのまま判断能力を失ったら、どうなってしまうのでしょうか。
できれば、成年後見を利用すること無く、家族が父の資産を管理運用できるようにならないでしょうか。
今後もマンションを長女の私が管理したり、恐らく母は父よりも相当長生きすると思いますので、父が亡くなった場合には、母が住めるようにできないでしょうか。
このマンションは立地がいいので、父が退去した後は、賃貸に出したいと思います。
また、万が一金融資産で今後の介護費用等の捻出ができなくなれば、私が父に代わって売却して、介護費用に充てることが出来るようになればいいと考えています。
また、父が死亡した後の遺産相続でこのマンションや金融資産を他の兄弟と揉めること無く、行き先を父に決めて貰いたいです。
当プラザの提案
(写真は実際のケースとは関係ありません)
当プラザ司法書士がお父様、長女、母との面談の機会をいただき、ご自宅であるマンションまで伺いました。
父・母の意見ともに、概ね長女が言われたとおりでした。
そこで、信託完了後には、次の事ができるようにしました。
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父のマンション、金融資産を長女が管理運用することができます。
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父が死亡した後は、マンションの受益者として、母を指定しているので、母は、マンションを所有しなくても、マンションに住む権利を持つことができます。
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長女が父のためにマンションの大家として、賃貸借契約ができます。
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長女が父のためにマンションを売却して、資金を作ることができ、介護費用に充てることができます。
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長女が父のためにしっかり管理運用しているかを当プラザ税理士が信託監督人としてチェックするので、もし父が判断能力を失ってしまった後でも安心です。
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信託した金融資産は、成年後見制度よりも柔軟に、父のために使用することができます。
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父母が死亡したら、信託が終了することとしました。残った信託財産の帰属先として、長女とすることを信託契約の内容に盛り込んだので、父が遺言書を書いたと同等の効力を発生させることができます。
当プラザ司法書士において、信託スキームの構築を行い、信託契約公正証書の作成のサポート、信託登記も行い、無事終了しました。
あとがき
親の通帳を子供が所持したりして、親の財産を家族が事実上管理しているケースは、本当によく聞く話です。
平常時は問題が起きないのですが、財産を運用したり、不動産を売却したりする際には、自分の名義ではないので、親の本人確認や意思確認が生じて、途端に財産管理を継続していることが困難になってしまいます。また、親が死亡した後、他相続人から、「生前に親の財産を使い込んだのではないか。何に使ったのか全部証明しろ」と言われ、よかれと思って善意無償で親の財産を管理してあげていたのに、そんなこと言われるのは心外です!と憤って当プラザに相続の相談に来られるお客様が少なからずおられます。
善意無償で親の財産を管理すること自体は素晴らしいことですが、成年後見や信託を利用することなく何年もやっていると、どうしても自分に対する甘えが生じて、キチンと帳簿を付けなかったりして、資金使途が不明な支出がでてしまうものではないでしょうか。
信託を利用して、親の財産を管理すれば、自分名義で管理することができ、財産の活用や不動産の売却にも支障がでませんし、信託監督人や受益者代理人などの「監視者」を置くことで、親のかわりにキチンと財産管理が行われていることをチェックすることもできます。